藤野1号だたら (1998.9.20)
「黒鉄会、本格小だたら初操業」
できたできた! ケラができた!
昨年の冬から用意した、たたら場でやっと操業。山から木を伐り、皮をナタで剥き、雪の日に木下ろし、畑へ運び、人力で高さ7mの柱を組み立て、やっと屋根を葺いたのが5月。
そしてホーローの風呂桶で小だたらの地下構造を作ったのが7月。夏の暑いさなかに土掘り、石集め、耐火煉瓦での炉作り、乾燥、外壁作り、乾燥、内張り、乾燥と慣れない作業が続く。
黒鉄会のみでたたら製鉄を実行することを夜も眠れぬほど心配したのが関市の大ボス尾上さん、電話をくれて事細かに教えてくれた。
さあ、いよいよ当日。羽口の位置を確認したり、一通りの手順を確認して、炉に火を入れたのが10:30。しかし1時間ブロアーで風を送っても炉底温度は上がらない。
結果を簡単に言うと、ノロが出たのが何と午後4時なのだ?!
こんなことって初めてだ〜!
ある人からは「始めての炉はノロができたら上出来、海綿鉄ができたら大成功」と言われていたので、まあ、何とか海綿鉄ができたらと意気込んだ。しかし、ノロすらできない。3時頃になるとみんな疲れが出てきてあちらこちらで居眠りが出ていた。
そこで、途中から下羽口と上羽口の2本羽口で風を送ってみたら急に炉底温度が上がって来たので、5度目の正直でノロ出し口を突っついた。すると何と世にも美しい赤いトロトロしたノロが流れ出てきた。
ワーッと大きな歓声が上がる。
周囲は薄暗くなっていたが、これで疲れも吹き飛んだ。しかし、残りの砂鉄は約3キロしかない。今回はノロができて上出来としよう。
最後の砂鉄を投入して、下がるのを待ち、炉を壊しだしたのはすでに6時を回っていた。土煙をあげる作業はなかなかの迫力。やがて、中から真っ赤な固まりが現れた。急いでホースで水を引き、冷やしてガンガン割ると海綿鉄がある、それにヘニャッと曲がる鉄がある。これはこれはと顔が喜びでニンマリしてくる。そのうちいくら渾身の力を込めても割れないものがある。これは何だ?! ひょっとして、これはケラか? まちがいなく煎餅状になっている銀色に輝いたケラだった。
結果は海綿鉄、鉄、ケラを合わせて4.08キロの収穫だった。
とにかく大満足の一日で、その後、藤野温泉に入り、みんなでラーメンを食べて解散。ずっしりとした体験を積んだ長い一日はこれで終了。
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