藤野10号だたら (2006.05.21)

 


予定通り7:30に火入れ。8時を少し過ぎてから大和久伸介さんと大野師匠もたたら場に到着。
以下、簡単にざっと箇条書きします。


1、炉の温度が上がった段階で、砂鉄投入は初めは600g。徐々に上げて行き、最後は1200g。


2、初めは完全に透明な還元炎。煙突部分は砂鉄の還元帯。その下あたりで海面鉄ができて来ると透き通ったオレンジ色。その下で海面鉄が溶け出し溶解炎になったら茶色がかった炎の色になる。
この炎の色を見ることが難しい!


3、途中で炎が濁ったオレンジ色になったらノロが詰まっているのでノロ出し。この時は同時に炭と砂鉄の下がり方が極めて遅くなる。


4、砂鉄の湿り気は手で握って崩れないほど。また水が滴らない程度。乾きすぎていると砂鉄が落ちる速度が速すぎてしまう。


5、炭の落ち方は8cm落ちるのに8分程度が目安。各自、いつの間にか作業分担していて、うっかり炭の落ち方を忘れてしまう。


6、始め、ノロが粘くてどうしようもなかった。師匠は砂鉄のチタン分が多すぎるか、釜土が悪いのか、炉の作り方に問題があるのかと考えていた。


7、結果的に、始業羽口の作り方に問題があった。ノロが粘いのは炉の作り方が悪かったことが判明。


8、大野師匠の話しでは「始業羽口がどのくらいの角度が良いか、いろいろ試したけれど25度が一番良い。」送風機が良いものであれば角度は30度ほどでも炉底全体の温度を上げることが可能でも、送風機が悪いと羽口の先しか温度が上がらない。角度がきつくなればなるほど顕著。


9、その後、師匠の判断で始業羽口の2本目として作ってあった角度40度の羽口に切り換え。下に貯まっている粘いノロは新たな炉底とみなす。


10、それから少しして、角度が25度の操業羽口に切り換え送風。(この辺の判断がさすが大野師匠だと、一同、みな唸る・・・。)


11、やっとノロがトロトロと流れるノロになった。これで温度が十分に上がったことがわかる。


12、温度が高温で安定し、これからがやっとケラを作る砂鉄投入。


13、砂鉄は合計34.3kgいれたが、砂鉄の質が悪いこと、炉の構造が問題だったので、ケラの歩留まりは極めて悪いことを前もって師匠に言われる。しかし、そんなのは問題ではない。師匠に教わった内容は数量では表せない内容の方が重要で嬉しい。


14、午後1時24分、砂鉄投入を終了。


15、火伏せ。藁を使ったが、天気が良い日は普通の生の草の方が火事の危険がないので良い。火伏せは煙突に入れる炭を節約するのが目的で、何も入れないと鉄の酸化が進んでしまう。(炭の節約とは皆一同びっくり。特に元東工大生は「おまじない」と聞いていて疑っていなかった?!)


15、炉の解体。煉瓦は互い違いに積むのでは壊しにくいので、同じ上下の列で作った方が良い。外壁があるので作業途中で壊れたりはしない。


16、ケラ出し。みんなケラがあるのかないのか、ハラハラ、ドキドキしているのに大野師匠は落ち着いたもの・・・。やはり自信が読み取れる。ただニコニコしている・・・。結果は4kgの塊のズク(銑鉄)が出てきた。底の3〜4cmほどの丸い固まりが集まっている形状からわかると言う。理由は火球(一番温度が上がる部分)で球炭した後、脱炭しないでできたからだ。40度の始業羽口を使ったからだ。なるほど、なるほど!! 小ケラを含め、合計5.6kgの収量だった。
ただし、大野師匠は形から判断しているだけで、実際にはその後に脱炭することもあるので火花試験をしないとはっきりしたことは言えないと。

 

●<大野師匠と伸介さんにお礼>
とにかく、大野師匠、本当にありがとうございます。師匠は帰り際に「私が来ると何かの気が残って、次からたたらをやる時には気楽にできるようになる」と笑って言いました。みんなもそんな気分にすでになっています。教えてもらったことがあまりにも多くて、私たちには消化吸収できるのは1割くらいしかないと思います。でも、とにかく楽しかったこと、学ぶことがたくさんあったことに感謝致します



 

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