藤野11号だたら (2006.11.26)

 

と、と、とにかく、できたのだ〜!!
残念ながら全部がまとまったケラにはなりませんでしたが、10cmほどの形の悪いまとまりが3つ、5cmくらいのがチマチマ、それと海面鉄、ズク、粒鉄などを合計すると、20.6kg程度の砂鉄から4kg(もちろんノロは噛んでますけど)取れたのには、参加者一同「まさか?!」と驚いちゃった!


● 反省点----ケラがまとまらなかった理由

1、炉が完全に乾燥していなかった。

2、炉が乾燥していないにもかかわらず「割ノロ」を入れてしまい、炉底温度が下がった。

3、できるノロの温度が低くて、ノロ出しができずに、どんどん炉底が上がってしまい、それに伴い、始業羽口を徐々に上げざるを得なかった。操業羽口に切り換えたが、炉底が上がっているので、吸炭した後に炉底までの距離が短く脱炭できない部分はズクになった。要するに、炉内の温度が一定していなかったので、炭素量がバラバラになった。

4、炉の温度が上がるのに時間がかかってしまい、砂鉄投入が午後になってしまった。

5、砂鉄投入後、順調に砂鉄と炭は落ちて行ったが、途中から温度が下がってしまった。それにも関わらず、投入量を減らすこともせず、一定量の投入を続けてしまったために炉内温度が下がってしまった。

6、炉内温度が上がらなかったので、ノロの流動性が上がらず、ケラがまとまらなかった。

7、送風機が弱くて、炉内温度が下がった後に、再度、上げることができなかった。


●● 良かった点

1、羽口ののぞき窓を無くしたので、炉内の状況を炎の高さ、色、形を見ることが、全員できるようになった。

2、温度を手や、炉からの距離を考えて肌の感じで捕らえることができた。

3、今までになく、参加者が穏やかに作業ができた。緊張はしてもピリピリ感やハラハラ感がなく作業ができたのは初めて・・・・??

4、土の配合が良かったことは、今年の3回の操業で確定。

5、最後に大野師匠が「2kg」取れたら成功だと言われたが、結果は2倍できた。

●●● 改善点

1、なんと言っても「新しい強力な送風機」を購入する。

2、湿気の高い日や、雨の日に操業をしないこと。
→ 後で大野師匠から「前後3日くらいの天気を考えて操業日を選ぶこと」と、言われた。

3、とにかく炉の乾燥を完全にすること。

4、ノロ出し口は、やはり私たち素人は1か所ではなく増やした方が良い。



<とにかく大野師匠にお礼!!>

5月に指導に来て頂いたが、今回、それをどれだけ生かせるかが問題だったが、今回の程度までできて「指導のありがたさ」を実感!とにかく「炎を見ること」、「温度を体で感じること」に敏感になれました。

さらに師匠から「できた物をちゃんと保管しておいてください。ある程度集まったら、おろし金をしましょう。」と言われました。大野師匠はまだ黒鉄会を見放さないどころか、おろし金まで教えてくれるようで、心より感謝、感謝です!!


<成功の鍵は、とにかく土だ!>

とにかく重要なのは「土」です。1400度でやっと溶けるような土です。溶けやす過ぎると、炉底温度が低いうちに土が溶けてノロになってしまい、そのノロが炉底温度を下げてしまい、炉底が真っ黒に冷え固まってしまいます。質の良い花崗岩の真砂土は適度に粘り気があり、なおかつ砂分を残していて1400度でやっと溶けます。しかし、私たちが山梨県で採取した物は低温で溶けてしまいます。さらに粘土分が少なく砂分がないので、乾燥した時の収縮が激しくてヒビが割れてしまいます。耐火温度を上げるために蛙目粘土を入れました。木節粘土も成分は同じですから、どちらかを使えば解決できます。さらに花崗岩の砂を混ぜて、収縮率を下げました。これは左官の常識です。黒鉄会が土壁を作る時もうまくいかずに、左官屋の久住章さんから教えてもらいました。
やはり「たたら製鉄」は、「1に土、2に風、3が砂鉄で4村下(むらげ)」ですね。

<闇から光りへ>

過去の操業を振り返ると、始めの3回くらいは奥出雲の砂鉄と土を使っていたので、やみくもに操業してある程度の鉄(ケラとしてきれいにまとまってはいない)が取れました。その後、いろいろな人がいろいろな事を「アドバイス」と称して関わって来て、黒鉄会は「やみくも」に失敗を重ねて来ました。さまざまな人間関係や、さまざまな「たたら操業」を見て、そして黒鉄会は「とにかく、始めからやり直して、大野師匠だけに聞こう」と決めました。しかし、ここからが「土」との格闘が始まりました。東工大を卒業した方々が関わってくれるようになると同時に考古学者との出会いなどがありました。そうして今年の4月の「練習たたら操業」で、大野師匠に来てもらえるレベルになったと判断でき、5月に直接、指導してもらうことに繋がりました。つくづく、人と人の関係性と繋がりが重要だと、ずしりと重たく感じます。それが今回の操業の結果です。長かった闇から道が見えました。見える道は暗闇に消えてはいません。光があるので道ははっきり見えるようになりました。さあ、大野師匠が元気なうちに黒鉄会はもっと腕を上げましょう!!


 

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