藤野12号だたら (2007.4.15)

 
結果から言うと、大きなケラにはまとまりませんでしたが、28kgの砂鉄から何と8.4kgの鉄が取れました!! 大収穫〜!!

この日は、前から相談をしていて、途中で困ったことがあっても大野師匠に電話相談をしないで、みんなで相談をして進めようということになっていました。今までといちばん違ったのは強力な送風機を新たに買ったことです。
さあ、これで前回の問題点が克服できるかどうか・・・・。
操業前日に送風機を安定させるために台を作る大工仕事が必要でした。そして十分な乾燥を・・・。

7時に第一陣到着。まもなく、第二陣もやって来て、あわてて朝ご飯を食べている宿泊組を無視して、みんなはどんどん操業の準備。第三陣も来て、予定通り9時には操業開始。

今回は炉作りの時に、炉底の「ぐり石」まで取ってしまったので、西川さんが炉底の構造に工夫をしていることが良くわかりました。今までは「タダで頂いた物」としてありがたく使っていたものの、大だたらの地下構造が応用されていることを知りませんでした。「小舟」と言われる湿気が抜ける「道」が作ってあるのです。みんなでひたすら感心していましたが、操業の時には、さらにその役割に感心することになりました。
操業していて昼過ぎまで、その「小舟道(これって変な名前かな・・・・)」から、ずっと湿気が抜けていました。今までも、同じ状況だったのでしょうが、誰も気が付かなかったのです。これじゃあ、豚に真珠でした・・・・。西川様〜、申し訳ありません。今回は、その威力がわかったので「西川様、ありがたや、ありがたや〜!!」でした。

さて、外から見て、どこも炉の外壁が塗れている所もなく、順調に温度が上がったと思ったので、10時くらいに0.6kgから砂鉄投入を始めました。

今回は、みんな「炎の色と形」を見ることがわかっているので、作業の手を止めなくても、いつも炎には注意していました。ずっと炎を見つめて変化をすぐに見分けて指示が出ていました。
見学者として参加した若い女性3人もいつの間にか「研修生」とか「実習生」とか呼ばれて、作業員に使われていました。だって、作業着をしっかり着ているので、参加しなきゃつまらないでしょう?!

でも、たたら製鉄はそんなに簡単ではないのだな。間もなく、炎の色が朱色に濁って来てしまった・・・・。炎の大きさも小さい。これはどうも始業羽口の前がノロで詰まっていると思うとみんなで判断。1回目のノロ出し。ところが、硬い、粘い。
困った、困った。でも、師匠に言われた、「我慢、我慢」と。そこで、砂鉄投入を中断して、炭だけにしました。

こんな状況になると、以前の黒鉄会では、みんながすごく緊張していましたが、この日は相談も和やかだし、作業分担もしていないのに、自然にみんなが何かの役割を担っているのです。だれかが変わると、誰かが穴埋めをするという何か不思議な一体感がありました。さて、我慢した結果、次のノロ出しはやっとサラサラのノロができました。

ここでの重要な問題は、今回、実は炉作りの際に炉底の位置を間違えてしまい、中の釜土がやたら分厚くなってしまったことです。そのために、外からは十分に乾燥していると思ったのに、やはり炉底の乾燥が完全ではなく、そのためにノロができた時に温度が一気に下がって回復できなかったと想像できます。

我慢の甲斐あって、炉の温度は回復したので、砂鉄投入を再開。
「でもさ〜、今日のこの雰囲気って何なんだろう。こんなにゆったりして<たたら>やってるの初めてだよね。」
そうなんです。大野師匠が来てくれた時に、「私が来るとみんなが和やかにできるようになります。」と言った通り、これは大野師匠の魔法としか言いようがありません。大野師匠に習ったので、何がいけないか、何が問題かがわかるようになったからですが、やはり、これだけではなく「魔法の空気感」が漂っているようでした。

やっと昼過ぎに「これからケラ作り」の砂鉄投入だなとわかりました。でも、問題は、操業羽口に切り換えてからも、過去の失敗と同様に、下の粘いノロが取り除き切れないので、底上げ状態になっていたことです。そのために、順調に下がっている砂鉄も、火球で吸炭した後に、脱炭する距離と時間がなくて、できるのは銑鉄だろうと想像ができました。鋼のケラとしてはまとまらないだろうとも予測していました。まあ、できても4kgが良い所かな・・・・。
砂鉄投入は徐々に上げて、1kg、1.2kg、1.4kgまで上げました。でも、とうとう3時少し過ぎに、操業羽口のギリギリの所までノロが上がって来てしまい、砂鉄投入は28kgで終了。

炭が下がるのを待って、さあ、いよいよ炉の解体。
どんどん作業が進んでいくと、まとまった大きな塊がどこにもない・・・・。何となく、みんなの気持ちが沈んで来始めていました。
でも、ズク(銑鉄)ができていたら、急冷されて白銑になっているはずなので、強い力で叩いたら簡単にバラバラになると大声で叫んでいるのに、みんな「そんなの知らない」と言って、ノロの固まりをバンバン叩くのです。今度、白銑、ネズミ銑とかチル化とか、ダクタイル鋳鉄とかの学習会をやらなくては!!

少し落ち着いて来たら、やっと丁寧に叩くようになりました。すると1kg弱の塊が4〜5個ほどノロの中から出てきました。中には海綿鉄もありましたが、多くは予想通りズクでした。それが細かいのもどんどん集めて計ってみると、何と8.4kgもあったのです。これにはみんなビックリ!!
嬉しくて、楽しくて楽しくて、みんなで大喜びしました。
振り返ってみると、始めの2〜3回のやみくもに鉄が取れた後には、いろいろな人の船頭でやみくもに失敗を続け10年。そして、前回は師匠の指導の後、やっと「何とか手法がわかった感じ」がして、そして、今回、確実に大成功しなかった理由もわかりながらも、こんな収量とは、本当に嬉しい限りです。

次の操業が楽しみです。



 

操業記録の目次に戻る

黒鉄会の目次に戻る