藤野26号だたら (2015.06.14)

4月末に炉作りをしていましたが、5月の操業予定日はあいにくの雨。なかなか日程調整がつかずに梅雨に入ってしまいましたが、前々日にはこの日の予報は曇り時々晴れ。今回は原料はすべて房総の砂鉄を使うと決めていました。当日の参加は中嶋、山崎、松嶋、内藤、朝吹、中野の6名。

前日から2名が泊まり込みで炉の乾燥作業。土曜日の昼過ぎにたたら場に着くと、とにかく蒸し暑い。それに草が伸び放題で1メートル程の草原になっていて、草刈りをしないとたたら炉に行けない。汗だくになって草刈り。道具を倉庫から出して電気を引いて、炉の乾燥を始めたのは15時頃。地主の河内さんからは、そろそろヤマビルがでるようになったので草の生えている所は気をつけてね、といわれました。雨が降ることはないと思い、テントには雨よけフライを張らずに、また、露も降りないから炭袋も道具類も外に出したままにして寝た。

ところが、朝方からポツポツと雨音がし、フライがないのでやがて寝ている顔に水滴が落ちてくる。それで一気に目が覚めた。これは困った。天気予報が外れた。あわてて炭袋にブルーシートをかける。かろうじて間に合った。
いつもは8時に集まって、すぐに操業を始めるのにこの雨降りには困った。屋根を上げられない。インターネットの予報では9時には止むらしい。だが、一時はザーザー降りの雨となり、天気予報通りに止むとはとても思えない。ヤマビルも元気よく活動するかも。

ところが雨は止んだ。空が明るくなり出した。「ソ〜レ!」と操業を始めた。火入れは9時45分。遅いが仕方がない。それに一部の炭に水分を含んでしまい、煙突から炭の青みがかった湯気が出てくる。
その後、2時間程乾燥させてから600gから砂鉄投入を始めた。順調に砂鉄は落ちていくが12時少し過ぎたころにノロ出しを試みたが、粘くて出ない。その頃、西川さんから携帯電話にリーン、リーン。「ノロが粘いと言うことは、いつもの黒鉄会か。」と笑われる。「ノロができても粒鉄がないノロじゃないとダメだって!」
なるほど、それはもっともな話しだ。ノロがサラサラなら粒鉄同士がくっついてケラに発達するはずだから。

始業羽口が詰まってしまったので、かなり早く操業羽口に切り替えた。
その後も砂鉄は順調に落ちていくので,徐々に砂鉄投入量を増やした。この頃には晴れ間ものぞいてますます蒸し暑い。みんなダラッとしてきた。



そして14時11分、ノロ出しをやったらサラサラのノロがいっぱい出てきた。
この少し前にスイス出張から戻った植木さんが遊びに来た。お土産にヴィクトリノックスの5本詰めのナイフ。え、人数分ないよ、と言うと、まだあるよと。え? 5本詰めでナイフを売ってるの?と、思ったら何とチョコレート?!ものすごく良くできたパッケージでみんなで大笑い。
植木さんもノロ出しを見たので「いいんじゃない」と安心して帰って行った。



その40分後にもノロ出しをしたら、やはりサラサラ。



これでみんなも今回はケラができていると思ったが、真知子ちゃんだけは違っていた。
磁鉄鉱の鉱石の時のように、あまりにノロがサラサラだと鉄分が全部ノロになってケラがないのではないかと心配していた。

15時22分、いよいよ炉の解体。砂鉄は合計30.2s入れた。外壁の土を取って、煉瓦を外しながらもケラがある自信がある人はいない。やっとゴロンとした大きな重たい塊が出てきた。それをドラム缶に放り込んで水で冷やしながら、冷えかけてからハンマーをふるっていると声があがった。「あった〜! ケラがあった!」



今回は3.1kgの一塊になったケラができた。他の少々の小ケラをいれると合計3.4kgの収量。
歩留まりは良くないが、奥出雲の真砂砂鉄ではなく房総の砂鉄でこんなに一塊になったのは初めてかも。
こんなにノロがサラサラしていたのも初めてだ。ノロには粒鉄はほどんどなかった。

ここまで来るのに何年かかったのだろうか・・・・。
ケラは大きいとは言えないが、とにかく「ゴロッとしたケラ」と「さらさらしたノロ」に満足、満足。
これで次にナイフ作りをやる材料も確保。

さあ次はどうやったら収量をあげるかが問題。でもそれよりも、もう一度同じ収量を再現しなくっちゃね。


 

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