藤野27号だたら (2016.04.30)

当日の参加者は7名。

9月上旬に炉を作り、昨秋の操業予定が度重なる悪天候で延期。そして、1週間前の操業予定、炭切りを兼ねて前日から乾燥するも夜半から雨がぱらぱら、天気予報が大はずれ。30日は連休のために高速道路の渋滞予想から、中野と朝吹は朝5時に起きて出発。早く着いたので、何はともあれ電気を引いて炉の乾燥を真っ先に行う。それが7時半。
まもなく中嶋さんと真知子ちゃんが到着。前夜の炉の乾燥を省略したので、この日は2時間半、砂鉄投入を待つ。いつもの房総の砂鉄です。
砂鉄は600gから4回投入。順調に炭が下がっているので次に800gに増やす。
炭切もやりながらの4人だけの作業はなかなか忙しい。
亡くなった大野師匠が一人で作業をしていたことがどんなにすごいか、あらためて感心する。



羽口の詰まりもあまりなく、いつもより順調に砂鉄投入は続く。
問題は風が強く、炎の色と形が見えない。耐火服を着た真知子ちゃんは風下から炭と砂鉄を投入するので、とても危険だ。
「西川さんから、だから壁のある小屋を作らないとダメって言われそう」などと話しをしながらも、落ち着いた作業が続く。しかしその後、始業羽口の部分が詰まってきて突いても無理になってきたので、操業羽口に切り替える。
すると砂鉄を1kgに増やしたが、極めて順調に炭は下がっていく。まもなく1.2kgに増やす。

午前中にラグビーの試合をして来た寛太君と川口さん、尾山さんファミリーが午後2時前に到着。このファミリーには1週間前の炭切り作業も手伝ってもらい、炉の横で一緒に夕飯を食べました。ワインのほか、シャンメリーとノンアルコールビールも用意。
川口さんは「たたら製鉄の前に四つ足、食べちゃダメなんですか?」と聞いた。
「いや〜、そんな話し今まで聞いたことなかったんだけど・・・・。」
でも、もちろんたたらの炉の上で焼いたりしてませんよ。炭と煉瓦で調理用に別に作りましたよ。

その頃になると明らかに炎の色が濁ってきたのでノロ出しを試みるが、とにかく粘くて出ない。突っ込んだ鉄の棒が取り出せなくなって(中野→中嶋)、それでも出ない。一番、大柄で力がありそうな川口さんに変わってもらい力一杯に引き抜いてもらったが,その時に尻餅をつくほどノロは粘かった。
ここで炉内の温度が下がったと思われるので砂鉄は0.8kgに減らす。



その後に操業羽口の上に作っておいた羽口に切り替える。
その後砂鉄はまた1kgに戻し、1.2kgに増やしたが恐いほどに順調に操業は続いた。
砂鉄は合計で35kgの投入で止めた。
その後、寛太君が鎌で刈ってくれた草で火伏せ。後は炭が落ちるのは待つだけ。



今回の一番の問題はサラサラのノロを出すことができなかったことだ。もしかしてケラはできていない可能性もあるので、ちょっとハラハラドキドキ・・・・。

道具を揃えていよいよ解体。
煉瓦はいつもよりもノロが粘く付いてしまっている。少しずつ解体していくと、驚くことに上の部分にノロが固まっているどころかノロがブクブクと。その下は、中が空になって穴が空いている。これってどういうこと?
中嶋さんが「これ棚吊りだ〜!」と大きな声で言った。確かに昔は棚吊りを心配していたが、今回はまるで頭になかった。炎の形が強風のために全然わからず、砂鉄は順調に落ちていったので棚吊りをしているなんて誰も考えていなかった。
ム〜、何もできていないの?と、みんな心配しているのに、「この下の部分にケラがきっとできている!」と強気発言も。
小学3年生の寛太君も熱い煉瓦を運んだり、水をかけたりして重要な作業要員として働く。

ノロの中から還元された小ゲラがいくつか出てきた。でも、これじゃあ、どうして35kgもすんなり砂鉄が投入できたかの理由がわからない?!
するとハンマーが金属を叩く音を出した。
「ほら! ケラだよ! あるよ! ケラがある!」
みんなに希望の笑顔が浮かぶ。



ゴロッとしたケラをシャベルに乗せて寛太君が水の入ったドラム缶まで運ぼうとしたが、さすがにお母さんの尾山さんがお手伝い。
ケラを水に入れるとゴボゴボと嬉しい音がする。

結局ケラは3.2kg。その他の小ゲラを集めると合計で5.1kgになった。

とにかく大きくはないけれど、固まりができて一安心。悪い釜土とチタン分の多い砂鉄で何とかケラを作る感覚が身に付いたような感覚があった。下手くそな黒鉄会だって奥出雲の良質の砂鉄と良質の釜土では何の問題もなくケラができるのだが、質が悪い材料で本当に難しかった(西川さんには、材料のせいにするなと怒られます)。よくも今まで失敗にもめげず続けてきたもんだ!!

亡き大野師匠に感謝、感謝!!

それにいろいろアドバイスしてくれる西川さんや、たくさんの疑問に答えてくれる野崎さんを始め、メーリングリストを読んでくれる皆さんに感謝!

今回も製鉄する前にちゃんと西川さんからいただいた「たたらのお守り」を下げて「西川さん、いじわるしないでね。」とお祈りしましたよ!


 

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