藤野4号だたら (1999.12.12)

 

 まず、とにかく約28キロの砂鉄から4.3キロの鉄ができたことはめでたいことでした。しかし・・・なのです。これは大野師匠の弟子の大和久伸介さん(刀匠名:小介兼正)が来てくれたからできたことで、とうてい黒鉄会だけでは不可能でした。
 まず、使用した砂鉄は千葉県の房総、飯岡のチタンが多くてとても細かい砂鉄です(前回までは出雲の砂鉄です)。28キロ投入してもかなり飛んでしまうので、粒の大きい砂鉄より収量は減るそうです。また、チタンの多いノロは色が違うこともわかりました。
 伸介さん:チタンの多い砂鉄はぶどまりそのものも悪く、一つにまとまりにくい。
それよりも問題は炉の作り方にありました。8月に大野師匠の所で一緒に炉作りもさせてもらった時は、煉瓦と煉瓦をつける土はかなりトロトロだったことは記憶していたのですが、今回はずいぶんと硬くて、その分厚くなってしまい炉の大きさが若干大きくなってしまいました。たたら場に現れた伸介さんの開口一番は「ウウウ・・・、炉が大きい、どうして?」でした。これが減点の始めで---------減点1
さらに始業羽口と操業羽口の位置がダメ--------減点2
 伸介さん:羽口の角度が水平だったのも減点ですね。
ノロだし口の下に熱伝対があって邪魔-------減点3
おまけに熱伝対を抜いたら穴が空いて炉底温度が下がってしまった-----減点4
煙突の大きさが大きすぎる-------減点5
羽口の位置に土を張ってノロが羽口にくっつくのを防止していない-----減点6
 伸介さん:羽口のパイプの径も小さかったですね!
当然、途中で何度も羽口が詰まりそうになって何度も何度も伸介さんは羽口を突っつきました。
 伸介さん:羽口と送風管の取り外しが出来なかったのも減点。
 しかし最大の問題がありました。それも2つも??!!それは羽口の位置をわずかずつ変えるために、そこは煉瓦を張らずに土で縦に約30cmほど作っていた場所があるのですが、まず横幅は羽口ギリギリのサイズで良いのにまだ大きすぎたことです。そのせいもあって、途中で全部ゴッソリ落ちて来てしまったのです! あわてて炭をつめて土を張ることを何回やったか・・・。前回は縦に自由が利かなくてどうにもならずに困ったので、今回は工夫したつもりが結果はとんでもないことになってしまったのです。ノロは順調どころが出すぎるくらいに出るので、しょっちゅうノロ出しをしなければならないのに、これではねぇ・・・-----------これで一挙に減点10
 しかし、何かのことを考えて反対側にも作ってあった羽口に切り替えて、さらに操業を続けました。
 伸介さん:長方形の炉の正面にしか羽口がなかったので火が回らなかったのと、本羽口の突起を作り忘れたのが致命的!
 しかしボッコリ空いたあの穴を考えると、これじゃあ、鉄ができてなくても仕方がないともう、みんなは思わざるを得ませんでした。
 それに実は最大の失敗がありました。前日の11日に炉作りをして乾燥させたら、やたらに炭が湿っていたので、水蒸気がモクモクあがるのです。もちろん、炉が乾燥しているので、土の湿気が抜けてはいるのですが、今までこんなことはなかったというくらいに炭が湿っていたのです。このまま帰ったら近所の人にボヤと間違えられて消防署に通報されたら困ると考え、ほんの5分くらいブロアーで風を送って乾燥を促進しました。ところが次の朝に行ったら土が熔けて小さなノロの塊がもうできていた???------------これでまた一挙に減点15
 伸介さん:更に、操業中最後まで外壁の土が乾きませんでした。外から水分がしみこんでそれも減点です!
 内側に薄く土が焼けた壁ができてしまっていたわけです。これではせっかく張った内壁の意味があまりないわけです。おまけに始めにノロ出しの時に何か硬いものがあると思ったら、これだったのです。
伸介さんは「1に土、2に風、3に砂鉄」と説明してくれましたが、その前に炉作りですね。人の作った炉で吹くのは無謀だと師匠に言われたこと、しかし敢えて今回は無謀を承知の上で来てくれたわけです。伸介様様様、ありがとさんね!! 
 伸介さん:昔からの伝承で、「1土、2風、3村下」と言います。ちなみに村下というのは、炉作りのうまさと火の見方、最後のケラ出しの見極めの技術のことです。
 それでも自信のある伸介さん「まあ、何もできてないことはないでしょう」
 でも、黒鉄会の人はできていない可能性は十分にあると、みんな内心は思っていました。しかしさすがプロ、転んでもプロ・・・、結果は4.3キロの鉄ができていました。塊にはなりませんでしたが、間違いなく銀色に光る鉄がありました。
 とにかくみんな喜びました。まさかこんな悪条件で鉄を作る伸介さんの技を一緒に体験できた充実感、それに何だかどこが悪いかわからないモヤモヤが、今回ははっきり指摘してもらったことが何よりも喜びでした。
 本当に伸介さん、ありがとうございました。さあ、黒鉄会も「兼正流小だたら」と自称できることを目指し次も頑張ります!
それにしても今まで4回やって3回はそれなりに鉄ができたことが、今にして思うと不・思・議。
とにかく今回はみんなものすごく満足で笑顔がさわやかでした。

付け足し:採点ミス:外張り粘土に切ったわらを入れなかった。少しだけ入っていたので、まあいいかと手抜きをしてしまったのです。さらに、こね方が足りなかったのです。 ------------これで減点もっと追加です。
 
伸介さん:更に付け足し、あまりにも道具が足り無すぎる! せめて鉄のバケツと、10キロ計、あと火かきもほしいですね。 炭も大きさがバラバラで火の周りを邪魔していました。鉈も最悪でしたね!(笑)

 滋賀県の西川さんが大急ぎでいろいろな道具を作ってくれました。
 感謝!感謝!大感激

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