次回のための「練習たたら操業」を実施しました。
結果は・・・・、「またもや失敗」と書く心の準備はできていたのですが、何と、まあ、8割方成功したのです???!!!
前日から夜通しの炉の乾燥をしたが、朝まで炉に炭が山盛りたくさん残っていたのは大失敗。予定ではみんなが集まって9時から操業する予定だったが、実際は10時を過ぎてしまった。
さて、私(AM)は操業はどうなるかと思うと9割は失敗、1割くらいは「もしかして」くらいしか考えていなかった。しかし、NSさんとNNさんは「できる」と思っているのを知って、その根拠の無さを鼻で笑っていた。YTさんは初めての体験なので、とにかく準備から全てに関わって失敗でも成功でも見てみようという意欲を感じた。
とにかく「たたら製鉄」になると傾向としてみんな興奮してしまうので、なおさらコントロールして平常心を保つように心がけが大切!!まずは炉底に赤く燃えている炭を入れてから炭を入れて送風開始。初めの1時間は前はこのままで温度を上げる。前の失敗たたらではこの時点で炉底の土が溶けて冷え固まってしまっていたが、今回は釜土に蛙目粘土を混ぜて耐火度を上げてあったため何とかしのげた。しかし本来は1時間ほどしてから始業羽口から操業羽口に切り換えるのだが、炭が落ちなくなってしまった。また土だけのノロが詰まってしまったのか・・・。仕方なく本羽口にブロアーを設置し風を送る。砂鉄の投入も始めたがやがて炎の色が赤くなる。これは何だ?
お助け電話で伸介くんにアドバイスを求めた。「始業羽口から本羽口に切り換える時に、温度が下がるので一瞬は2つの羽口から送風しても、ずっとやり続けると本羽口の先にできる火球(非常に温度の高い所)で鉄ができるのに、下の火球で再酸化されちゃうから炎が赤くなりますよ。」と。
確かに始業羽口の操業を止めたら、炎の色は変わった。全く、反応がすぐ出てくる。これが小だたらの難しさだ。
「永田式たたら製鉄」では砂鉄500gを3回ほど入れると本羽口に切り換えていたらしいが、釜土を使っているとそれではすぐに炉底が冷え込んでしまう。送風が滞っていたり、炎の色が赤くなりすぎると、これはノロ出しのタイミングかと試みたが、とにかく粘っこい。でも、ノロの中に粒鉄ができ始めていた。MTさんは「いやあ、これができれば古代製鉄ですよ。昔の人はこれを2次精錬して使っていたんですから。」
私も今回はノロが粘すぎるので固まったケラとしてはまとまらなくても、ノロの中に多少の鉄はできるかなと希望が出てきた。
砂鉄は500gから徐々に量を増やしていった。でも、時間と残りの炭の量から投入砂鉄は20kgと決めた。ところが、突然、STさんが「急に熱くなった。たたらの温度ってこれくらいじゃない?」と言った。まさしくその通り。さらに突然、炎の色が少し紫を含んだ還元炎に変わっていた。
みんなで「そうだ、そうだ、ここまで温度があがらないとダメなんだ!」。これが伸介くんが言っていた「良い状態」だと実感できた。本当はこれからがケラになる砂鉄投入なのだ。みんな一斉に続行しようと考えた。粘っこいノロでも高温になればサラサラになるからだいじょうぶと電話で伸介くんが言っていたが、残念ながら炭と時間がなくなってしまった。いよいよ炉の解体。
その前に、いつものようにどのくらい鉄ができているか予想した。NMさんの1.8kgからSTさんの4.2kgまでいろいろ。全部で21.3kgしか砂鉄は入っていないし、途中で止めざるを得なかったので、どうせノロ混じりで2kgくらいがせいぜいかな・・・。
ところがノロの塊を冷やして叩いていくと、まさに粒鉄同士が手をつなぎ合っているような形で10センチほどの物が出てきた。小さい物があったが、合計3kgになりました。
本当にこの「良い状態」を続ければ、ノロがサラサラになり粒鉄がまとまってケラになることが良く分かった。それもノロを噛んでいない粒鉄同士が集まろうとしている形がそのまま目で見ることができた。
大成功とは行かなかったが、とにかく最後まで操業できたこと、わずかでも鉄が取れたので、みんなとっても満足。
◆もちろん、反省点はいくつかあります。
1.乾燥には切り炭は使わず、黒鉄会で焼いた杉の炭を使うこと。
2.朝になって僅かに炭が残っている程度にしないと、すみやかに操業できない。
3.炉の作り方の問題。-----始業羽口は角度30度。少ししてから一段上げられるように隙間を開けておく。とにかく始業羽口は上下できるようにスリット状にしておく。下にはノロ出しの穴。その上にノロができているかどうかを確かめる針金を入れる穴も作っておく。
4.とにかく操業時間をもっと早くすること。そうしないと時間的にケラを作るところまで行かない。
5.釜土にも藁を小さく切って入れる。
6.釜土に砂を入れる必要はないが、ひび割れの部分は補修のために土を多めに用意。
7.炭は多めに用意する。次回は砂鉄30kg以上投入予定なので、炭は100kg用意。また今回炭が大きすぎた。4.5cmで注文したが、実際は5〜6cmだったので、次は4cmで注文しよう。◆今までと違った点。
1.炉の地下構造から作り直し、灰すらしを念入りにやったこと。
2.山梨の真砂土に蛙目粘土を入れて耐火温度を上げたこと。
3.ワーワー騒がず、落ち着いて作業ができたこと。