丸石クラブはこうやってできた

「丸石にめざめた日」

2、ヒスイ拾いの人たち
 実は私もSを待っている間の時間つぶしにブラブラと歩き回ってはみたのだ。ヒスイ探しは無理なのはわかっていたので、何か興味を引く石でもあるかと探したが、ほとんどが花崗岩で、少し安山岩があったり、砂岩があったりして取り立てておもしろい物はなかった。それで座り込んでボーっと海を眺めていた。ずいぶんと長い時間ボーっとしていた。そこに先ほどの子どもが現れたのだ。いったん、子どもが去ってから、ふと足下を見ると何とも丸っこい石がある。まあ、よくもこんなに丸くなってと思うほど、きれいに丸い。目をもっと遠くへ移すと、アレッ、あそこには大きい丸い石があるぞ、向こうにもあるぞ・・・。

 しかし、ここでは、まだ・・・、それだけのことだった

 駐車場へ戻り、次の海岸へ向かった。Sはもっと露頭のある場所を探していた。道はトンネルが多く、左は山がせり出していたのであまり期待はできなかったが、少し車で移動すると先ほどとは打って変わり広々とした海岸の上を走る道に変わった。駐車場もあったのでそこでまた車を降りた。広い海岸の波打ち際には5、6人の男が行ったり来たりしている。きっとまた、この人たちもヒスイ拾いだ。残念ながら露頭はなかったが我々もそろそろ昼飯にしよう。とっくに12時は過ぎている。食料を持って浜に降りた。10月なのに日差しが強い。まるで夏の終わりのような天気だった。波消しブロックの陰に隠れていつもの昼飯だ。パンとチーズとサラミソーセージ。どこへ行っても、いつ行ってもSの仕事のときにはこの食事と決まっている。今日はみかんと暖かい紅茶があるだけ上等だ。寒い晩秋でも時間がないと飲み物は冷たい水ということもしばしばだ。しかし、今日はこう暑くちゃ水でもいいくらいだ。腹の中に物を詰め込むと少し眠くなる上に、今日のだるくなる天気のせいで、なんだかボーっとしてくる。さらにこの広い海岸を通して海を眺めていると自分の体がゆらゆら揺れてくるようだ。
 このまま座っていると船に乗っているわけでもないのに、船酔いでもしそうになってくるからふしぎだ。我々も少し海岸でも歩いてみるか。  そこで向こうからやって来る男に声をかけた。
「すみません、何を探しているのですか」
「一応、ヒスイですが、なかなか見つかるものではないですね。だいたい、オレら素人にはわかりませんよ。でも、家でゴロゴロしているより健康にいいから、こうやって海へ来るのです」
 また、別の人に尋ねた。するとこう答えた。
「私は別にヒスイと限って拾っているわけじゃなくて、きれいなら何でもいいんです。ほれ、これくらいの大きさなら知り合いが石でアクセサリーを作っているから買ってくれるんです。1000円くらいかな。1日で5000円ほどにはなるもんで、ヒスイじゃなくてもいいんですよ。でも、たぶんこれはヒスイですよ。こんなに小さいから買ってはもらえませんがね、あげますよ。探せばあるんですよ、とにかく波打ち際を探すことです。乾いているとわからなくても濡れているとわかりますから。何かは拾えますよ」
 親切なおじさんはとても小さいヒスイらしき物をくれ、さらに丁寧にヒスイ拾いの方法も伝授してくれた。我々もせっかく教えてもらったので波打ち際を行きつ戻りつして「お金になる石拾い」を試みた。

(続く)

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