1974年の噴火

 1974年2月から5月にかけて,東鳥海馬蹄形カルデラ内の新山や荒神ヶ岳の周辺で,規模の小さい水蒸気爆発が起こった.これは140年ぶりの噴火であった.降灰と,融雪による泥流が発生した.火口はほぼ東西に並んで形成された.泥流は少なくとも6回は発生し,最大到達距離は3-4km程度であって,山麓には達しなかった.4月には秋田県湯沢市や本荘市でも降灰が記録されている.幸い,被害はほとんどなかった.

 この噴火では小規模な鶏冠型噴煙(cock's tail jet)が観察され,マグマ水蒸気爆発が行った可能性が指摘されたが,新しいマグマに由来すると断定される本質岩片は認められていない.なお,1974年の火口列の分布は1740年噴火や新山を形成した1800-1804年噴火で生じた火口の分布と極めて類似している.

 1974年の活動は,3週間ないし2ヶ月にわたる火山性地震の発生→噴気口形成・地温上昇を前駆現象として,数日間断続的に噴煙を上げつつ火口を拡大し,融雪に伴う泥流の発生と細粒火山灰の降下が行われる活動のピークと,その後半年以上の噴気活動を残すというサイクルが相前後して2回おこっている.

1974年噴火の火口と泥流の分布(宇井・柴橋,1975)