鷲羽・雲ノ平火山 

2001年4月公開、2021年3月追記、2021年12月、2023年9月追記

 鷲羽・雲ノ平火山は,北アルプスの最奥部,黒部川の源流部に位置しています.雲上の楽園,雲ノ平と名付けられた溶岩台地を中心とした雲ノ平火山,鷲羽岳南東中腹にある鷲羽池を中心とした鷲羽池火山などから構成されており,正確にいうといくつかの火山が集まっている火山群です(中野,1989,火山,vol.34).また,鷲羽池のさらに南東,硫黄尾根付近の変質帯は火山の岩石からできているわけではありませんが,ここでは活発な硫気活動が今でも続いており,1年に1回程度,水蒸気を吹き上げるようです.これを考えると,この火山群を活火山と認定してもよいかもしれません.そのほか,鷲羽・雲ノ平火山とは別物ですが,黒部川沿いには,薬師見平や読売新道沿いにも小さな火山がありました(これらをまとめて上廊下火山岩類と呼びます).
 雲ノ平火山の最初の活動は高天原付近の100-90万年前に活動した玄武岩質の火山でした.その後,約30万年前から安山岩とデイサイトからなる雲ノ平火山が活動したようです.鷲羽池火山はもっと新しく,約12万年前よりあとです.また,上廊下火山岩類と呼ばれる小さな火山群は,40万年くらい前から20-15万年前くらいの間に間欠的に活動したようです.

2021年3月追記
硫黄沢の噴気現象は、2020年8月から9月に山小屋関係者や多くの登山者に目撃されました。
これらの目撃証言や撮影画像はこちら → 及川・中野、2021及川・中野・田村、2021(いずれもGSJ地質ニュース)。


2021年12月追記
鷲羽池火口あるいはその南域(硫黄沢周辺)で約2700年前に規模の大きい水蒸気噴火が発生していたことが、富山大学の石﨑さんのグループによって明らかになりました(石﨑ほか、鷲羽池火山周辺に分布する橙白色テフラの産状と14C年代(序報)、2021、火山学会予稿集、p.46)。

2023年9月追記
鷲羽池火口では約1950年前、
硫黄沢周辺では4250年前に規模の大きい水蒸気噴火が発生していたことが、富山大学の石﨑さんのグループによって明らかになりました(原田・石﨑ほか、見逃されていた活火山の発掘Ⅱ:鷲羽池と硫黄沢で完新世に発生した大規模水蒸気噴火、2023、日本地球惑星科学連合2023年大会、SVC36-05)。


雲ノ平:溶岩台地



鷲羽・雲ノ平火山の地質図.中央やや下の茶色の部分が雲ノ平火山.5万分の1地質図幅「槍ヶ岳」の一部(原山ほか,1991)


この先,この鷲羽・雲ノ平火山について, 中野(1989),原山・竹内・中野ほか(1991,5万分の1地質図幅「槍ヶ岳」)に基づき,さらに最近の成果によりその概要を紹介します.

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