南硫黄島



 南硫黄島は直径約2 kmのほぼ円錐形をなし,最高海抜は伊豆諸島・小笠原諸島で最も高い海抜916 mを有する島である.島の平均傾斜は40°を超え,湾の出入りは全くなく,全周囲に海食崖が発達し,その基部には奥行き最大でも50 m以内の礫浜がわずかに形成されているのみである.松江岬の西方にやや規模の大きい崩落崖が形成されているほか,南崎などにも小規模な崩落地形が見られる.山頂部には火口地形及び火山体の堆積原面がわずかに残されている.

 後期更新世(中野ほか,2009)と推定される南硫黄島火山の噴出物から構成され,山頂火口を中心とした成層火山である.火砕物層を鍵層に,古期1,古期2,新期の3区分(福山,1983),あるいは,南部中期,北部中期を加えた5区分(中野,2008)がなされている.古期と新期で岩相の違いは特になく,いずれも陸上噴出の薄い溶岩流とそれに挟在する薄い火砕物から構成される.アア溶岩が卓越するが,パホイホイ溶岩も見られる.海食崖では,それらを厚さ3 m以内の250本を超える多数の放射状岩脈が貫いている(中野,2008).岩石はアルカリ岩系列あるいはアルカリ岩系列とソレアイト系列の中間的な玄武岩である(湯浅・玉木,1982;福山,1983).

 

2007年,東京都及び首都大学東京の調査に同行し,南硫黄島の地質調査を実施しました.その詳細は小笠原研究,第33号(2008年発行)にまとめられています.地質調査の結果も掲載されています.その後の研究はまだ中途段階でなかなか進みませんが,3.0万±1.1万という年代値が得られています(中野ほか,2009).


 

南西海上より見る南硫黄島。垂直な岩脈が白く光る。

 

漁船3隻(晴佳丸・第七貴丸・世拓丸)での調査。漁船からゴムボートへ。
そして固定ロープをめざして泳ぐ。
全員三点セットとウェットスーツ着用。事前に訓練もした。
ボートは何十往復も。まずは人、そして大量の荷物を陸揚げ。

 

波があると荷物の陸揚げも大変。

 

わずかな礫浜に設営されたBC全景。礫浜といっても人頭大以上の礫ばっかり。
前方からは波、後方からはいつ落石が合っても不思議ではない垂直の崖。

 

いよいよ調査本番。山頂へのルート工作班がまず出発。

 

 

現地に行くまでの準備も大変。クリーンルームで荷造り風景(首都大学にて)。

 

次へ

 

Back