諏訪之瀬島


 諏訪之瀬島火山は日本でも有数の活動的な火山であり、1813年噴火以降、活発にブルカノ式噴火やストロンボリ式噴火を続けている。富立岳火山、根上岳(別名ナベダオ)火山及び主成層火山体(御岳火山)から構成され、いずれも輝石安山岩の成層火山体である。北部の富立岳火山は溶岩及び火砕岩からなり、一部はマグマ水蒸気爆発に由来する火砕丘の堆積物である。約6万年前のK-Ar年代及び約3万年の放射性炭素年代が報告されている。南部の根上岳火山は溶岩及び火砕岩からなり、6-5万年前を示すK-Ar年代のほか、基底部からは約15万年前を示すK-Ar年代が得られており、少なくとも10万年より以前から活動を始めていた。やや開析されてはいるが、山頂部には火口地形(ナベダオ火口)が現存する。中央部の御岳火山は、古期・中期・新期に分けることがあるが、このうち中期噴出物からは7-6万年前のK-Ar年代が得られている。富立岳火山や根上岳火山は御岳火山活動開始以前に形成されたものではなく、活動期が重複していると考えられている。あるいは側火山として位置づけることもできる。AT火山灰降下以前にそれらの活動は停止していたと考えられている。

 諏訪之瀬島火山の主体をなす御岳火山主成層火山体では馬蹄形カルデラ(作地カルデラ)が東に開き、カルデラ外には旧火口が、カルデラ内には新火口がある。旧火口は1813年噴火の活動中心であり、島内全域にスコリアを降下したほか、西へ3方向、東へ1方向の溶岩流を流出した。この溶岩流については、スコリアが流動したものと考えている研究者もいる。カルデラ内では1884年に新火口が活動し御岳火砕丘が形成され、東海岸まで溶岩が流出した。なお、西海岸に達する須崎溶岩は、1813年以前では最も新しいとする考え方のほか、根上岳火山と同じ時期とする説、さらに古い火山島の残骸との説もある。

 作地カルデラ内に作地温泉が湧出する。そのほか、海岸部のフカウラ、作地海岸、須崎などでは伏流した温泉水が海中に流入し、変色海水を形成している。作地温泉は約50℃の硫酸酸性泉である。なお、諏訪之瀬島の南部には、確実度IIの活断層が2本あり、30-50mの垂直変位を与えている。

 

引用文献

平沢・松本(1983)、小林・原田(1984)、太田(1988)、小林(1989)、小林(2000)、嶋野・小屋口(2001)、土志田ほか(2004)、松本ほか(2006)、小林・棚瀬(2008)

 

 

諏訪瀬島火山の地質図。

 

 

噴煙を上げる作地カルデラ内の御岳火口。

 

作地カルデラ内の明治溶岩。

 

作地カルデラ北部を流れる。

 

砂浜、礫浜。

 

富立岳

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