鳥 海 山 (1998年12月)
鳥海山は山形・秋田県境に位置し,福島県の燧ヶ岳についで東北地方では2番目に高い山(標高2,236m)です.歴史時代に何度も噴火している活火山で,最新の噴火は1974年の水蒸気爆発です.火山体の直径は東西約26km,南北約14kmもあり,その裾野(西側)は日本海に面した断崖で切られています.山体の北と南,特に北側の象潟平野−由利原高原には,山崩れによる大小さまざまな岩塊からなる堆積物が広く分布していますが,そのうち最も新しいものは2600年前に山頂付近が崩れたものです(埋もれていた神代杉の年輪を解析した結果,この山崩れがおこったのは紀元前466年とわかりました).天然記念物である象潟付近の九十九島はその時にできた流れ山と呼ばれるたくさんの小山なのです.崩れてきた岩屑は海につっこんだので,この小山はかつては海の中に点々とする小島だったのですが,1804年の象潟地震により広い範囲が隆起して今のような陸地になったのです.このような山崩れによる堆積物を除くと,鳥海火山には火砕流や降下軽石・火山灰などが少なく,主に溶岩流が流れ出て成長してきた山なのです.
鳥海火山はおおまかに西部(西鳥海)と東部(東鳥海)に分けられます.“西鳥海”は,鍋森や鳥海湖を取り囲む,南西に開いた西鳥海馬蹄形カルデラを山頂部に抱え,その西側には溶岩流に覆われたなだらかな山容が日本海に向かって広がっています.一方,“東鳥海”は,新山や荒神ヶ岳を取り囲む,北に開いた東鳥海馬蹄形カルデラを山頂部に持つ火山体であり,こちらが鳥海山の主峰です.山頂近くは30度近い傾斜がある,比較的なめらかな円錐形の山体で,東方から望むと確かに富士山に似た山容をみせており,出羽富士という呼び名もうなづけます.
この先,鳥海山の成長史,噴火記録,地形,滝などを紹介します.