御嶽くずれ による堆積物の分布

 1984年9月14日,M6.8の長野県西部地震によって御嶽山南麓一体で斜面崩壊がおこった.このうち最大の崩壊は,御嶽山地域の伝上川上流で発生した.その崩壊物は水を含まない砕屑物の高速の流れ−岩屑なだれとして流下した.その一部は三笠山と小三笠山の間を流れて木曽福島地域内に達し,鈴ヶ沢の東股および中股に流下した.上流域では水を含まない岩屑なだれであったが,中流域では水と混合し,土石流となった.現在,木曽福島地域内では,大部分はその後の浸食により消失したが,わずかに小三笠山東方の東股源頭部に岩屑なだれ堆積物が残っている.
 岩屑なだれ堆積物は谷底では数十mに達したが,台地上では薄く,数m以下であった.堆積物は安山岩岩塊とその細粒物を主体とし,淘汰が悪く,明瞭な成層・級化構造を示さない.下流域の濁川や王滝川では, 明瞭な流れ山地形がみられた.台地上では,長さ数百mにも達する墨を流したような多色縞模様がみられた.
 発生直後の観察によると,鈴ヶ沢の東股・中股合流点付近から下流は土石流堆積物であった.厚さ約1m以下で,下部は明瞭な級化を示さず,上部は正常級化した砕屑物であり,安山岩角礫・円礫(河床礫),とそれらの細粒物(細粒砂・細礫)・泥からなり,木屑を含んでいた.なお,この堆積物は,現在ほとんど消失している.

 

1984年御嶽くずれによる堆積物の分布竹内・中野ほか(1998)の第51図
1:崩壊地 2:岩屑なだれとその後発生した土石流および洪水の流路 3:岩屑なだれが削剥した地域(記号5の地域を除く) 4:岩屑なだれによる主な倒木地域 5:岩屑なだれ堆積物に薄く覆われた削剥域 6:岩屑なだれ堆積物が厚く堆積した地域 7:岩屑がなす多色縞模様 8:岩屑なだれ堆積物表面の“しわ” 9:土石流・洪水堆積物 10:せき止め湖


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