白馬大池火山では,風吹岳周辺にのみ多数の小爆裂火口が認められます.風吹岳溶岩ドーム上には山頂部の火口のほか,東西方向に配列した火口群があります.小敷池もその一部です.また,風吹岳西方には科鉢池のほか,ほぼ南北方向に伸びた割れ目火口と推定される火口群があります.これらは,空中写 真で見る限り溶岩ドーム周辺の円形に近い火口群よりも火口地形としては新鮮に見えますので,おそらくより新しい時代に活動したものでしょう.これらの正確な活動時代は不明ですが,一部は後期更新世の末期か,あるいは完新世にかかる可能性があります.これについては確認できませんでした. 図は風吹岳周辺の爆裂火口分布を示しています(柵山,1984による).図中のE,Fのほか,その西方-南西方に円形あるいは南北方向に伸張した火口が認められています(図の上が北).

白馬大池火山の岩石
 白馬大池火山では安山岩が卓越し,少量のデイサイトを伴います.全体として斜長石斑晶が卓越し,全容量の16-34%含まれています.旧期噴出物のSiO2含有量は55.1-60.7%,新期噴出物では57.1-64.8%です.
 旧期噴出物:マフィック斑晶は紫蘇輝石・普通輝石が卓越する安山岩であり,少量のかんらん石が含まれることもよくあります.
 新期噴出物:安山岩は,紫蘇輝石・普通輝石・かんらん石のほか,角閃石・黒雲母・石英も含み,複雑な斑晶組合せを持った岩石です.デイサイトは,含水鉱物(角閃石・黒雲母)や石英に富み,時にかんらん石を含む岩石です.
 故 柵山雅則さんは,EPMA(electron probe microanalyzer)装置を用いて斑晶鉱物の詳細な分析を行っています(Sakuyama,1978,1979).柵山さんの研究では,非平衡な斑晶組合せが出現し(例えば,かんらん石と石英が同一のマグマ中に平衡には存在し得ないはずなのに,共存している),バイモーダルな組成分布(斑晶中心部の組成の分布が2つのピークを持つ)を示したり,逆累帯構造を持つ(例えば,斑晶中心部より周縁部がマグネシウムに富む)マフィック鉱物(輝石・かんらん石)が存在したりします.これらのことは,白馬大池火山の岩石が玄武岩マグマとデイサイトマグマの混合により生成された証拠であると考えられています.この研究がきっかけとなり,日本の多くの火山でマグマ混合によるマグマ成因論が展開されました.


  

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