鉱床はどのようにしてできたか?


鉱床はいろいろなところでいろいろなでき方をする.


鉱物は環境が変わると別の鉱物に姿を変える.


1.マグマ(火成岩)と関係した鉱床
マグマの結晶分化作用:マグマの冷却に伴って,結晶となった鉱物,たとえば磁鉄鉱が密度差により沈降してマグマ溜りの底に集積する.または,液相の不混和現象により,Feに富んだ液相(重い!)が分離沈降する.
分化が進み揮発性成分に富むようになったマグマでは,流体相(さまざまな金属元素を溶かし込んだ水溶液)ができる.揮発性成分が周囲の岩石を高温で変成させる(接触変成鉱床.接触交代鉱床,スカルンともいう).または,流体相が冷却し,その中に溶かし込んでいた金属元素を沈積させる(熱水性鉱床).
 岩手県釜石鉱山や埼玉県秩父鉱山は磁鉄鉱,和賀仙人鉱山は赤鉄鉱を主とする接触変成鉱床.
 熱水:さまざまな金属元素を溶かし込んだホットな水溶液


2.残留性鉱床
 地表付近の岩石が,風化作用を受け,新しく生成された難溶性鉱物が残留濃集してできた鉱床.たとえば,アルミの原料となるボーキサイト(Al2O3・nH2O).これは,FeとAlの水酸化物が濃集したラテライトから,Feが溶脱したもの.ラテライト(紅土)は高温多雨の熱帯地域に発達し,その成因にもバクテリアが関与しているらしい.
 風化により,2価のFeが酸化されて3価になる(通常,土壌の色の違いは,Feの含有量や酸化の程度により,大きく変わる). 表面水に溶けにくいため, 酸化物または水酸化物として残留濃集する.一般に品位は低く,個々の鉱床は規模が小さい.
石灰岩に起因する鉱床:鉄分に富む赤土(terra rossa)が発達する.本来石灰岩中に不純物として含まれていたFeやMnなどが,コロイド溶液として移動し,赤鉄鉱・褐鉄鉱・硬マンガン鉱として鉱床を形成.または,石灰岩中の菱鉄鉱が風化し,褐鉄鉱として残留.
硫化鉱物に富む鉄鉱に起因する鉱床:鉱床の酸化帯を形成する.
 たとえば,2FeS2+8H2O+CO2 → 2Fe(OH)3+4H2SO4+H2CO3
蛇紋岩に起因する鉱床:風化作用により生じた赤鉄鉱を主体とする(磁鉄鉱→赤鉄鉱).

3.堆積性鉱床
砂鉄鉱床:磁鉄鉱を主体とし,その他,チタン鉄鉱・褐鉄鉱・赤鉄鉱を含む. そのほか,輝石・角閃石などさまざまな鉱物を含む.岩石中に含まれていた鉄鉱物が,岩石の風化・分解の結果,河川などにより運搬され淘汰・集積したもの.場所により,山砂鉄・川砂鉄・湖岸砂鉄・浜砂鉄などと呼ばれる.
 もともとの鉄鉱物は火山岩(安山岩など)起源または深成岩(花崗岩など)起源. 酸性岩(SiO2成分が多い.たとえば花崗岩)起源の砂鉄は,不純物が少ない.塩基性岩(SiO2成分が少ない.たとえば玄武岩)起源の砂鉄は,不純物が多く,特にTiや Pが多い.
 山地の表土中の砂鉄は“残留砂鉄”といい,風化により生じた土砂中に産する.昔,山陰地方で花崗岩が風化したものがたたら製鉄に用いられたが,数%程度のFeを含むにすぎない.

先カンブリア時代の縞状鉄鉱層(BIF: Banded Iron Formation )
溶液として運搬されて(Fe2+を溶かし込んだ海水),化学的(無機化学的または生物化学的)沈殿物として沈積した化学的堆積鉱床.酸化的環境で形成.0.5〜3cmの厚さの,チャートと鉄に富む層の繰り返し.一般に,数十mから数百mの厚さの地層となる. 全世界の鉄鉱石資源の約60%を占める.大部分が30〜18億年前に形成された. 

 BIF中の鉄鉱物は,酸化物相(磁鉄鉱・赤鉄鉱),炭酸塩相(菱鉄鉱),珪酸塩相(グリーナライト・チャモサイトなど),硫化物相(黄鉄鉱)からなる.海水のEhやpHなどのさまざまな条件により沈殿物が変化する.チャート(ほとんどSiO2)の中には,微生物化石の名残と考えられる組織を普遍的に観察できる.通常,Feは15〜40%の品位であるが,風化過程その他による二次的に富化作用を受けると,60%以上の高品位になることがある(赤鉄鉱や針鉄鉱).

BIFの成因は,大気−海洋系を含む地球表層の環境変化を反映しており,地球科学上の重要な研究テーマである.連続したBIF帯は,なにと関連した地帯なのか? プレートテクトニクスと関連か? 鉄に富む層とチャート(微細な石英の集合)が縞状に繰り返すのは,Feの供給量の季節変化を表すのか? それとも,バクテリアの活動が変わる季節変化か? なお,現在ではこのような堆積物は形成されてはいない.
 Feの起源は,大陸の岩石の風化により水に溶けて運搬されたのか? それとも,海底火山活動に関係した熱水活動によりもたらされたのか?

 
熱水:さまざまな金属元素を溶かし込んだホットな水溶液

カンブリア紀以降の鉄鉱層(Ironstone)
浅海性で陸源物質を含む鉱層. 砕屑物の起源である岩石の風化・分解によって生じたFeを含む溶液から,化学的沈殿により堆積したもの.BIFに比べ局所的で小規模である.約6億年前より新しい.

バクテリアによる褐鉄鉱鉱床
 鉄バクテリア Iron bacteria による化学的堆積鉱床
 Fe2+→Fe3+  この反応の触媒として働く.鉄バクテリアにはいろいろ種類がある.

沼鉄鉱鉱床
 寒冷地の湖沼では,沼鉄鉱(不純物の多い鉄の沈殿物の総称.一般に水酸化鉄Fe(OH)3の沈殿物の集合:褐鉄鉱)が生成する.
腐植土により還元的環境 → 水中のFeはFe(HCO3)2 → 酸素が供給されると,褐鉄鉱Fe(OH)3として沈殿する.

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