鉄は酸化物や硫化物など,さまざまな鉱物に含まれている.その主なものは・・・
●磁鉄鉱 Magnetite Fe3O4 鉄の含有量72.4% 八面体
TiO2を最大20%近く含むことがある(チタン磁鉄鉱).
火成鉱床,接触変成鉱床,砂鉄などとして産する.
火成岩や変成岩中で,普遍的に産出する副成分鉱物(玄武岩・安山岩・花崗岩など,我々が通常目にする火成岩には少量ではあるがごく普通に含まれる)
●赤鉄鉱 Hematite Fe2O3 鉄の含有量70.0% 板状などさまざま
磁鉄鉱より酸化的条件で,磁鉄鉱が酸化してもできる.粉末状だと赤褐色.
鏡鉄鉱も赤鉄鉱である.
●チタン鉄鉱 Ilmenite FeTiO3 鉄の含有量26.9% 六角板状
火成岩や変成岩中の副成分鉱物として存在する.
●針鉄鉱(褐鉄鉱)Goethite (Limonite) FeOOH 鉄の含有量62.9% 無定形
褐鉄鉱(FeOOH・nH2O)とは,吸着水や毛管水を持った針鉄鉱の集合体
沈殿褐鉄鉱鉱床(火山に関連した鉱床が多い.鉄泉から沈殿)
風化残留鉱床
堆積性層状鉱床(湖沼での酸化作用:鉄バクテリアの作用による沈殿)
塊状または粉状樹枝・葉片・蘚苔類の仮像をなすものもある.
高師小僧もこれ.
●菱鉄鉱 Siderite FeCO3 鉄の含有量48.2%
●磁硫鉄鉱 Pyrrhotite FeS〜Fe7S8 鉄の含有量63.5-60.4%
隕石中のものはほとんどFeS(トロイライト)
●黄鉄鉱 Pyrite FeS2 鉄の含有量46.5% 立方体あるいは五角十二面体
熱すると740℃付近で磁硫鉄鉱と液体に分解する.
硫黄を取り除く技術的困難さのために鉄の主要資源にはなり得ない.鉱石を焼いて硫黄を亜硫酸(SO2)として取り除いても,少量の銅や亜鉛を含んでおり,良質ではない.硫黄の原料として有用.
●白鉄鉱 Marcasite FeS2 鉄の含有量46.5%
黄鉄鉱と同質二形.450℃に熱すると黄鉄鉱に転移する.
そのほか,珪酸塩鉱物にもFeを含む鉱物がたくさんあるが,耐火性がありこわれにくいため,金属の回収が容易でない.それゆえ,一般に資源とみなされない.たとえば,かんらん石はMg2SiO4とFe2SiO4の固溶体であり, (Mg, Fe)2SiO4と表すが,その端成分であるファヤライトFe2SiO4ではFeの含有量が54.8%もある.
これらの鉱物は,環境が変わると姿が変わる.たとえば,温度,酸素や硫黄の圧力,pH(ペーハー)などが変わると,化学反応が起こる.たとえば,磁硫鉄鉱はさらに硫黄とくっついて黄鉄鉱になる.磁鉄鉱が酸化して赤鉄鉱になったり,さらに水と反応して褐鉄鉱になったりする.逆に酸素がなくなると,もちろん常温ではおこらないが,磁鉄鉱が金属鉄になる.