砂鉄について
山陰地方では、砂鉄はもともと花崗閃緑岩(かこうせんりょくがん)や花崗岩(かこうがん)に入っていた磁鉄鉱の粒です。こららの岩石には、石英や長石のほか、黒雲母・角閃石などの鉱物が含まれています。磁鉄鉱は多くても5%以下しか含まれず、その大きさは1mm以下です。
では、花崗岩があればどこでも砂鉄が採れるかというとそういうわけではありません。磁鉄鉱を含むものと含まないものがあります。山陰地方の花崗岩には含まれていますが、山陽地方ではほとんど含まれていません。地質学的に言えば、山陰地方の花崗岩は磁鉄鉱系列の花崗岩、山陽地方の花崗岩はチタン鉄鉱系列の花崗岩といいます。このちがいは、花崗岩のできた場所のいろいろな条件がちがうことによります。
安山岩に含まれる磁鉄鉱と花崗岩に含まれるものでは、その成分が異なります。たとえば、安山岩中の磁鉄鉱はチタン成分が多い特徴があります。玄武岩中では、もっとチタン成分が多くなります。
砂鉄を“真砂(まさ)砂鉄”と“赤目(あこめ)砂鉄”と分ける場合があります。一般的には山陰側は真砂系、山陽側は赤目系と言われています。赤目砂鉄は還元しやすく、真砂砂鉄は還元はしにくいけれど品質は良いということは、昔から経験として知られていました。江戸時代の大だたらも赤目砂鉄と真砂砂鉄をじょうずに使い分けて品質、収量を上げる技術を確立したと言われています。
また、赤目砂鉄を、安山岩などに含まれているようなチタンの多い砂鉄だという人もいますが、これは現在、多くの研究者が疑問視しています。この問題を奥出雲に限らずにもっと広範囲に見ると、地域や人によって真砂・赤目の分け方が異なっていたこともわかりますが、これから研究者の議論の的になることでしょう。
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