3、 鉄 (てつ) ・鋼 (はがね) ・銑鉄 (せんてつ)

 鉄の性能としては、かたいこと、靱性(じんせい=粘り強く曲げに強い性質)に富む、焼き入れができる、製錬しやすいことなどが上げられます。また、銅などにくらべると、地球上には鉱石となるものが豊かで世界の各地で原料を手に入れやすかったとも言えます。
 それでは、たたら製鉄と近代製鉄が大きく違うのはどこでしょうか。たたら製鉄は炉の温度が低く、約1400度から1450度くらいの低温で作ります。近代製鉄では燃料として石炭から作ったコークスを使い、高温で大量に鉄を作ります。原料となる鉄鉱石をすべて溶かし、次の転炉(てんろ)という工程を経て、鉄鋼材料を作ります。たたら製鉄は規模も小さく、また1回の作業で直接、鋼を作ったり銑鉄[鋳物(いもの)に使う鉄]を作ったりします。低温で作ることから不純物の少ない鉄ができること、コークスにはリンやイオウが多いのですが、それが木炭燃料には少ないので鉄に入り込まないこと、それで錆びにくい鉄ができることが、たたら製鉄の特徴です。
 現代では錆びない「ステンレス・スチール」もありますし、いろいろな用途に応じて合金の研究が盛んです。しかし、現代の製鉄をもってしても日本独特の刀を作るための材料を作るのは困難なのです。
 ここで、「鉄」を分けて鉄、鋼、銑鉄などという言葉が出てきました。これらの違いはその中に含まれる炭素の量によります。鉄は炭素が少なく、柔らかいので釘や針金などに使われています。鋼は鉄よりは炭素が多く、焼き入れ(加熱して急冷)をすると、とても硬くなる性質があります。代表的なものには刃物があります。もっと炭素が多くなると銑鉄になります。炭素が多いと低い温度で溶ける性質を利用し、鋳型(いがた = 砂などで作る型)に流し込んで固め、鉄瓶(てつびん)や鍋(なべ)、釜(かま)をつくります。
 英語では鉄は「iron (アイアン)」、鋼を「steel (スチール)」と言いますが、日本では鉄と鋼と銑鉄を一緒にして「鉄」ということもあります。また、銑鉄を古い言葉で「ズク」と言ったりします。それから、たたら製鉄では鋼のかたまりを作りますが、このときは「ケラ」を作ると言います。ケラは質の良い鋼の部分とか、そうでないところなど、さまざまな性質の部分があります。特に質の良いところを現代では「玉鋼(たまはがね)」と呼んでいますが、これは江戸時代にはなかった呼び名です。


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