4、 たたら製鉄の材料

 鉄をつくるには何が必要でしょうか? それには原料の「鉄鉱石(てっこうせき)」が必要です。でも、自然の状態で地球上にある鉄鉱石はそのままでは人間が使える鉄ではありません。人間が使うにはたたいたり、溶かして型に入れていろいろな形にできるような加工できる材料にしなければなりません。
 それにはどうしたらよいのでしょうか。自然にある鉄鉱石は、実は酸素やイオウと結びついている場合が多いのです。これはなにも鉄の鉱石だけではなく、ほとんどの金属の鉱石に共通していることです。イオウと結びついた鉄である、黄鉄鉱(おうてっこう)や磁硫鉄鉱(じりゅうてっこう)は製鉄の原料には使いません。でも、「酸素と結びついた鉄の原料」=「酸化鉄」からは鉄をつくることができることを、人間は昔から知っていたのです。鉄鉱石の中の酸素と結びついている鉄の状態から、酸素を切り離すことを「還元(かんげん)」と言います。そうやって人間が使える金属にします。これを「製錬(せいれん)」と言います。
 その「還元」を行うには燃料が必要です。昔から、その燃料には多くの場合、木炭が使われてきました。たまに薪(まき)そのものが使われたこともあります。この燃料を不完全燃焼させて一酸化炭素を出して、それで還元させます。
 そして、その燃料を燃やすためには大量の空気を送る「風」と、土や石を材料とした熱に強い入れ物の「炉(ろ)」が必要です。「風」は、昔はフイゴという道具を使いました。昔の人は「還元」という言葉も考えも知りませんでしたから、炉の中に炭と砂鉄などを交互に入れ、風を送り、経験と勘(かん)で製鉄を行っていたわけです。
 さあ、これで、たたら製鉄に必要なものがそろいました。
1、鉄鉱石   2、木炭(または薪)   3、風   4、炉
 それではもう少し、具体的に見てみましょう。鉄鉱石と言っても、いろいろあります。たたら製鉄に使える鉄鉱石にも種類があります。
1、磁鉄鉱 (じてっこう) 2、赤鉄鉱 (せきてっこう) 3、褐鉄鉱 (かってっこう)
 たたら製鉄で使う材料としてよく知られているのは「砂鉄」です。これは字の通り、「砂のような鉄鉱石」ですが、ほとんどが小さな磁鉄鉱の粒です。砂鉄になりやすい磁鉄鉱は、花崗岩(かこうがん)、安山岩(あんざんがん)という岩石などに入っていますが、ほかにもいろいろな岩石に入っています。また、磁鉄鉱のかたまりもあります。これを「岩鉄」と呼んだり、河原で角が丸くなり餅のように見えるものを「餅鉄」(べいてつ)、さらに小さな米粒大のものを「米鉄」などということがあり、呼び名はさまざまです。このうち、ここではどこに砂鉄があるかを少し話します。
 まず、みなさんは海岸で黒い浜を知っていますか? そこに磁石を持って行くと「くっつくもの」これが砂鉄です。これを「浜砂鉄」と呼びます。同じように、川の曲がった所の河原に黒い砂鉄が貯まっている場所があります。これを「川砂鉄」と呼びます。次にもっと山をさかのぼりましょう。すると砂鉄のあった元の場所にたどり着きます。山の中に岩石がボロボロに細かくなって、荒い土のようになった場所があります。ここにも砂鉄があります。これが「山砂鉄」です。山の砂鉄も、山から川へ、川から海へと少しずつ流されて下って行くのです。
 たたら製鉄には赤鉄鉱や褐鉄鉱など何でも使われました。でも、日本列島には砂鉄がたくさんあったので、全国で使われた材料です。


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