4.火山の体積と噴出率鳥海火山の総噴出量は72.8立方km,現存する体積は67.2立方km3と算出されている(林,1984).以前は,鳥海火山の体積は232立方km3とされていたが,これは詳しい地質調査に基づかずに,分布面積と山体の比高から計算されており,上げ底型であったり,火砕物が薄く広く分布する火山ではこの見積りは大きな誤差を生んでしまう.噴出量と各ステージの活動時期を組み合わせて噴出率を求めると,およそ次のようになる(単位は立方km/千年).
ステージI: 47/(500-150)= 0.13
ステージII: 22/(150-20)= 0.17
ステージIIIa: 3.5/(20-2.6)= 0.20
ステージIIIb: 0.79/2.6= 0.30
これをみると,噴出率としては決して衰えていない.逆に最近は大きくなっており,火山としてはまだまだ成長しそうな雰囲気である.ただし,体積の見積りは古いものほど不正確になり,また,山体崩壊などにより失われているため過小評価されていることもある.約40万年前にはステージⅠの古期成層火山がほぼ完成していたと考えられているので,ステージIの最初の10万年間の噴出率を求めるとステージIIIbの噴出率を上回り,時代が古いほど噴出率が小さいとは一概には言えない.また,鳥海火山全体の噴出率は0.15立方km/千年である.これは富士山(8万年間,5.0立方km/千年),伊豆大島(2.5万年間,1.8立方km/千年),浅間山(5万年間,1.3立方km/千年)などに比べ,1桁小さい噴出率である.
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内部は新しい溶岩流が埋めている |
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